
労働法 - 第 5 章 - 職場における対話、団体交渉、集団労働協約
第 5 章 職場における対話、団体交渉、集団労働協約
第 1 節 職場における対話
第 63 条 職場における対話の目的・形式
1. 職場における対話は、雇用者と被雇用者間で情報を共有し、理解を深めることを目的とし、
職場の労使関係を構築するために行われる。
2. 職場における対話は、被雇用者と雇用者の間、または労働組合の代表部と雇用者の間
の直接的な意見交換を通じて行われ、事業所における民主的規則の履行が保証される。
3. 被雇用者と雇用者は、政府の規定に基づいて、職場における民主的規則を履行する義
務を負う。
第 64 条 職場における対話の内容
1. 雇用者の生産・経営状況。
2. 労働契約・集団労働協約・就業規則・規則・誓約・職場におけるその他の合意の履行。
3. 労働条件。
4. 被雇用者・労働組合の雇用者に対する要求。
5. 雇用者の被雇用者・労働組合に対する要求。
6. 両当事者が関心を持つその他の内容。
第 65 条 職場における対話の実施
1. 被雇用者が、国内または外国で職業訓練・再訓練・職業技能水準向上訓練を雇用者の
経費、協力者から雇用者に対して援助される経費を受け取る場合、両当事者は職業訓
練契約を締結しなくてはならない。
職業訓練契約書は 2 部作成され、各当事者が 1 部を保管しなければならない。
2. 職業訓練契約が主な内容として含むべき事項は、次に掲げる通り。
a) 訓練する職業。
b) 訓練場所、訓練期間。
c) 訓練費用。
d) 被雇用者が訓練後に雇用者のために就労すべき期間。
đ) 訓練費用の返還責任。
e) 雇用者の責任。
3. 訓練費用に含まれるのは、教員に対する支払い費用、学習資料、学校、教室、機械、設
備、実習資材、訓練生を補助するためのその他の費用、訓練期間中の訓練生の賃金、
社会保険料および医療保険料で、合法的な領収書のある費用である。被雇用者が外国
に送られて訓練を受けた場合、訓練費用にはさらに往来の交通費、外国滞在期間中の
生活費も含まれる。
1. 職場における対話は、3 カ月ごとに 1 回、または一方の当事者の要求に基づいて行われ
る。
2. 雇用者は、職場における対話を行うための場所を用意し、その他の物質的条件を整える
義務を負う。
第 2 節 団体交渉
第 66 条 団体交渉の目的
団体交渉は、次に掲げる目的のために雇用者と討論し交渉することをいう。
1. 調和的・安定的・進歩的な労使関係を構築すること。
2. 集団労働協約を締結するための根拠となる新たな労働条件を確立すること。
3. 労働関係の各当事者の権利と義務の履行における問題や困難を解決すること。
第 67 条 団体交渉の原則
1. 団体交渉は、善意・平等・協力・公開・透明性の原則に基づいて行われる。
2. 団体交渉は、定期的または臨時に行われる。
3. 団体交渉は、両当事者が合意した場所で行われる。
第 68 条 団体交渉要求権
1. 各当事者は団体交渉要求権を有し、要求を受けた当事者は交渉を拒否することができな
い。交渉の要求を受けた日から 7 営業日以内に、各当事者は交渉会合の開始日につ
いて合意する。
2. 一方の当事者が、合意した交渉開始日の交渉会合に参加できない場合は、延期を提案
する権利があるが、団体交渉の要求を受けた日から 30 日を超えてはならない。
3. 一方の当事者が交渉を拒否、または本条で規定する期限内に交渉を行わない場合、他
方の当事者は法律の規定に基づき、労働争議による解決の要求手続きを行う権利を有
する。
第 69 条 団体交渉の代表者
1.団体交渉の代表者は、以下の通り規定される。
a) 労働団体側は、企業内の団体交渉である場合は、事業所の労働組合の代表部であり、
産業別の団体交渉の場合は、産業別労働組合の執行委員会である。
b)雇用者側は、企業内の団体交渉である場合は、雇用者もしくは雇用者の代表者であ
り、産業別の団体交渉の場合は、産業別雇用者の代表組織の代表者である。
2.交渉に参加する人数については、両当事者の合意による。
第 70 条 団体交渉の内容
1. 賃金、賞与、手当および昇給。
2. 勤務時間、休憩時間、時間外勤務、交代制勤務間の休み。
3. 被雇用者の雇用保証。
4. 労働安全・労働衛生の保証。就業規則の履行。
5. 両当事者が関心を持つその他の内容。
第 71 条 団体交渉の手順
1. 団体交渉の準備手順は、次に規定する通りである。
a) 労働組合が要求する場合、雇用者は生産・経営活動の状況に関する情報を団体交
渉会合が始まる尐なくとも 10 日前までに提供しなければならない。ただし雇用者の
営業上の秘密・技術上の秘密を除くものとする。
b) 労働組合の意見聴取。
労働組合の交渉代表者は、被雇用者の雇用者に対する提案および雇用者の労働組
合に対する提案について、労働組合から直接的または被雇用者の代表者会議を通
じて間接的に意見を聴取する。
c) 団体交渉の内容の通告。
団体交渉を要求した当事者は、団体交渉会合が始まる日の遅くとも 5 営業日前までに、
他方の当事者に文書で通告し、団体交渉で予定されている内容について知らせな
ければならない。
2. 団体交渉の実施手順は次に規定する通りとする。
a) 団体交渉会合の開催。
雇用者は、両当事者が合意した時間と場所に基づいて、団体交渉会合を開催する責
任を負う。
団体交渉は議事録を作成しなければならない。議事録には、両当事者が合意した内
容、合意した内容に関する文書の調印予定日、まだ意見が異なっている内容を記
載しなければならない。
b) 団体交渉会合の議事録には、労働組合代表者、雇用者および議事録作成者が署名
しなければならない。
3. 労働組合の交渉代表者は、団体交渉会合が終了した日から 15 日以内に、団体交渉会
合の議事録を労働組合に公開・周知して、合意した内容に関する労働組合の表決後の
意見を聴取しなければならない。
4. 交渉が失敗した場合、両当事者の一方は、交渉の継続を提案するか、または本法の規定
に基づいて、労働争議の解決手続きを行う権利を有する。
第 72 条 団体交渉における労働組合・雇用者の代表組織・労働に関する国家管理機関の
責任
1. 団体交渉に参加する者に対して、団体交渉能力の養成を行うこと。
団体交渉能力の養成組織は、団体交渉に職員を参加させること。
2. 団体交渉の両当事者の一方から要請がある場合、団体交渉会合に参加すること。
3. 団体交渉に関連する情報を提供・交換すること。
第 3 節 集団労働協約
第 73 条 集団労働協約
1. 集団労働協約とは、両当事者が団体交渉で合意した労働条件に関する労働団体
と雇用者間の合意書である。
集団労働協約は企業の集団労働協約、産業別集団労働協約、政府の規定に基づく、そ
の他の集団労働協約の形式を含む。
2. 集団労働協約の内容は、法規に違反してはならず、法規よりも被雇用者に対してより有
益でなければならない。
第 74 条 集団労働協約の締結
1.集団労働協約は、労働団体の代表者と雇用者、もしくは雇用者の代表者との間で締結さ
れる。
2.集団労働協約は、各当事者が団体交渉会合で合意に達した場合にのみ締結される。ま
た、
a) 企業の集団労働協約を締結する場合は、労働組合の過半数の者が団体交渉の内
容に賛成する。
b) 産業別集団労働協約を締結する場合は、事業所の労働組合の執行委員会、もしく
は事業所の上部の労働団体の代表者の過半数が、団体交渉の内容に賛成する。
c) その他の集団労働協約の形式は、政府の規定に基づく。
3.集団労働協約が締結された後、雇用者は被雇用者全員に公表しなければならない。
第 75 条 国家管理機関への集団労働協約の送付
締結日より 10 日以内、雇用者もしくは雇用者の代表者は、以下の機関に集団労働協約の
一部を送付しなければならない。
1.企業の集団労働協約の場合は、労働に関する省レベル国家管理機関に送付する。
2.産業別集団労働協約、及びその他の集団労働協約の場合は、労働傷病兵社会事業省
に送付する。
第 76 条 集団労働協約の発効日
集団労働協約の発効日は、協約に記載される。発効日が集団労働協約に記載されない場
合、発効日は締結日となる。
第 77 条 集団労働協約の修正・補則
1.両当事者は以下の期間内に、集団労働協約の修正・補則を要求する権利を有する。
a) 1 年未満の集団労働協約に関しては、発効日より 3 ヶ月後である。
b) 1 年から 3 年の集団労働協約に関しては、発効日より 6 ヶ月後である。
2.法規の変更によって、集団労働協約が法規と一致しなくなった場合、両当事者はその
法規の施行日より 15 日以内に、集団労働協約を修正・補則しなければならない。
集団労働協約の修正・補則を行っている期間において、被雇用者の権利は法規に基づ
いて解決される。
3.集団労働協約の修正・補則は、集団労働協約の締結と同様の手続きで行なわれる
第 78 条 無効な集団労働協約
1.協約の内容で、1箇所、あるいは複数の箇所が法規に違反すれば、集団労働協約の該
当箇所は無効となる。
2.下記の場合に該当する集団労働協約は、全内容が無効となる。
a) 全内容が法律に違反する。
b)締結者が権限を持たない。
c)締結が団体交渉の手順に基づかない。
第 79 条 集団労働協約の無効を宣告する権限
人民裁判所は、集団労働協約の無効を宣告する権限を有する。
第 80 条.無効な集団労働協約の処理
集団労働協約の無効を宣告された場合、無効と宣告された全部、または該当する一部分の
協約で定めた各当事者の権利、義務及び利益は、法規及び労働契約における合法的な合
意に基づいて解決される。
第 81 条 集団労働協約の期間の終了
集団労働協約の期間が終了する3ヶ月前までに、両当事者は集団労働協約の期間の延長、
または新たな集団労働協約の締結を交渉することができる。
集団労働協約の期間が終了したが、両当事者が交渉を続けている場合、その集団労働協
約は 60 日間を超えない期間では有効である。
第 82 条 団体交渉、集団労働協約の締結の費用
雇用者は、集団労働協約の交渉、締結、修正、追加、送付、公表の費用を負担しなければ
ならない。
第 4 節 企業の集団労働協約
第 83 条 企業の集団労働協約の締結
1. 企業の集団労働協約の締結者は、以下に規定する通りとする。
a) 労働組合側は、事業所の労働組合の代表者とする。
b) 雇用者側は、雇用者または雇用者の代表者とする。
2. 企業労働協約は、5 部作成されなければならない。このうち、
a) 各締結者が 1 部ずつ保管する。
b) 1 部は本法第 75 条の規定に基づいて、国家機関に送付される。
c) 1 部は事業所の直属の上部労働団体に送付され、1 部は雇用者が会員である雇用者
代表組織に送付される。
第 84 条 企業の集団労働協約の履行
1. 雇用者、および集団労働協約の発効日以降に就労した者を含む被雇用者は、集団労働
協約を十全に履行する責任を負う。
2. 集団労働協約の発効日以前に締結した労働契約の中で、各当事者の権利・義務・利益
が、労働協約の対応する規定と比べ低い水準だった場合は、集団労働協約の対応する
規定に適合させなければならない。労働に関する雇用者の規定が、集団労働協約に適
合していない場合は、集団労働協約の発効日から 15 日以内に、集団労働協約に適合
するよう修正しなければならない。
3. 一方の当事者が、他方の当事者が労働協約を十全に履行していない、または違反してい
ると認めた場合は、労働協約を正しく履行するよう要求する権利を有し、両当事者はとも
に解決を図らなければならない。解決できない場合、各当事者は法規に基づいて団体
労働争議による解決を要求する権利を有する。
第 85 条 企業の集団労働協約の期間
企業の集団労働協約の期間は 1 年から 3 年とする。集団労働協約を初めて締結する企業
の場合は、1 年未満の期間で締結することができる。
第 86 条 企業の吸収・合併・分割・分離、企業の所有権・管理権・使用権に変更がある場
合における集団労働協約の履行
1. 企業の吸収・合併・分割・分離、企業の所有権・管理権・使用権に変更がある場合、後継
の雇用者と労働組合の代表者は、労働者使用計画に基づいて以前の集団労働協約を
継続・修正・補則するか、または交渉によって新たな集団労働協約を締結するかの選択
を検討する。
2. 雇用者の事業停止により集団労働協約の効力が失われた場合、被雇用者の権利は労働
に関する法規に基づいて解決される。
第 5 節 産業別の集団労働協約
第 87 条 産業別の集団労働協約の締結
1. 産業別の集団労働協約を締結する代表者は、以下に規定する通りとする。
a) 労働組合側は、産業別労働組合の委員長とする。
b) 雇用者側は、産業別団体交渉に参加した雇用者代表組織の代表者とする。
2. 産業別労働協約は 4 部作成されなければならない。このうち、
a) 各締結者が 1 部ずつ保管する。
b) 1 部は本法第 75 条の規定に基づき、国家機関に送付される。
c) 1 部は事業所の直属の上部労働団体に送付される。
第 88 条 企業の集団労働協約と産業別の集団労働協約の関係
1. 企業の被雇用者の合法的な権利・義務・利益に関する企業の集団労働協約の内容、ま
たは雇用者の規定が、産業別の集団労働協約の対応する規定の内容と比べ、低い水
準だった場合は、産業別の集団労働協約が発効した日から 3 カ月以内に、企業の集団
労働協約を修正・補則しなければならない。
2. 産業別の集団労働協約の適用対象でまだ企業労働協約を作成していない企業は、産業
別の労働協約の規定より被雇用者に有利な条項がある企業の集団労働協約を作成す
ることができる。
3. 産業別の集団労働協約にまだ参加していない産業内の企業に対し、産業別の集団労働
協約の履行を奨励する。
第 89 条 産業別の集団労働協約の期間
産業別の集団労働協約の期間は 1 年から 3 年とする。