労働法 - 第 6 章 - 賃金
第 6 章 賃金
第 90 条 賃金
1.賃金は両当事者の合意に基づき、業務を行うために、雇用者が被雇用者に支払う金額
である。賃金は業務や職位に基づく給与、役職手当、扶助及びその他の手当を含む。
被雇用者の賃金額は、政府が定めた最低賃金を下回ってはならない。
2.被雇用者の賃金は、業務の能率および成果に応じて支払われる。
3.雇用者は、同一の業務を行う被雇用者に対し、性差別をせず、平等に賃金を支払うこと
を保障しなければならない。
第 91 条 最低賃金
1.最低賃金とは、通常の労働条件で最も単純な業務を行う被雇用者に支払われる最低の
金額であり、被雇用者及び彼らの家族の最低の生活需要を保証できるように設定され
るものである。
最低賃金は月、日、時間、地域別、産業別により設定される。
2. 被雇用者及び彼らの家族の最低限の生活の必要、経済社会状況、及び労働市場での
賃金額に基づき、政府は国家賃金評議会の提案による地域別最低賃金額を公表する。
3. 産業別最低賃金額は、産業別団体交渉により設定され、産業別集団労働協約に記載さ
れるが、政府が公表した地域別最低賃金を下回ってはならない。
第 92 条 国家賃金評議会
1. 国家賃金評議会は政府の諮問機関であり、労働傷病兵社会事業省、ベトナム労働総盟
および中央の雇用者代表組織の代表者から構成される。
2. 国家賃金評議会の役割、任務および組織は、政府が具体的に規定する。
第 93 条 賃金テーブル、賃金表及び労働基準量の作成
1.政府が規定した賃金テーブル、賃金表及び労働基準量の作成原則に基づき、雇用者は
募集、労働の使用、労働契約の給料交渉および給料支払いの根拠とするために、賃金
テーブル、賃金表及び労働基準量を作成する責任を負う。
2.賃金テーブル、賃金表及び労働基準量を作成する際、雇用者は事業所の労働組合の
代表部より意見を聴取しなければならないほか、作成した賃金テーブル及び賃金表を
雇用者の所在地の労働に関する県レベルの国家管理機関へ送付し、実施前に事業所
で公表・公開しなければならない。
第 94 条 賃金の支払い形式
1. 雇用者は、支払い形式を時間、出来高、請負のいずれかの形で選択することができる。
選択した形式は一定期間維持しなければならない。賃金の支払い形式を変更する場合、
雇用者は被雇用者に尐なくとも 10 日間前に通知しなければならない。
2. 賃金は、現金または銀行に開設された被雇用者の個人口座を通じて支払われる。銀行
口座を通じて支払う場合、雇用者は口座の開設と維持に関連する各種手数料について、
被雇用者と合意しなければならない。
第 95 条 賃金の支払い期限
1.時給、日給、週給の被雇用者は、その時間、日、週の作業を済ませた後に賃金の支払
いを受ける。また、両当事者の合意により、まとめて支払いを受けることもできるが、それ
は尐なくとも 15 日に 1 度の支払いでなければならない。
2.月給の被雇用者は、満1ヶ月に1度もしくは半月に1度、給与支払いを受けることが出来
る。
3.出来高、または請負の被雇用者は、両当事者の合意に沿って賃金の支払いを受ける。
業務の実施に数ヶ月が必要な場合は、月間で完了した作業量に応じた賃金の前払いを
受けることが出来る。
第 96 条 賃金の支払い原則
被雇用者は、直接、十分に、期限通りに賃金の支払いを受けることができる。
期限通りに賃金の支払いができない特別な場合も、雇用者による被雇用者への支払いの遅
延が、1ヶ月を超えてはならない。また、雇用者は、遅延期間に対して、尐なくとも賃金の支
払い時点における、中央銀行が公表した金利に相応する金額を、被雇用者に追加で支払
わなければならない。
第 97 条 時間外労働、深夜労働の賃金
1. 被雇用者が時間外労働をする場合、単価または通常の賃金に基づいて算出される、以
下の賃金が支払われるものとする。
a) 通常勤務日の時間外労働の場合は、尐なくとも 150%。
b) 週休日の時間外労働の場合は、尐なくとも 200%。
c) 祝日または有給休暇の時間外労働の場合は少なくとも 300%。日給の被雇用者
に対しては、それに加えて祝日または有給休暇日の賃金を支払う。
2.深夜労働をする被雇用者には、尐なくとも単価または通常の賃金に基づいて算出される
賃金の 30%に相当する割増分が支払われるものとする。
3.深夜に時間外勤務をする被雇用者には、本条第 1 項、第 2 項の規定に基づく賃金以外、
単価または昼間の賃金に基づいて算出される賃金の 20%に相当する割増分が支払わ
れるものとする。
第 98 条 休業時の賃金
休業の場合は、被雇用者は以下の通りの賃金の支払いが受けられる。
1. 雇用者の過失による場合、被雇用者は賃金の全額を受けられる。
2. 被雇用者の過失による場合、本人に賃金は支払われない。同じ事業所で勤務し、休業
する他の被雇用者は、両当事者が合意した水準の支払いを受けられるが、政府が定め
る地域別最低賃金を下回ってはならない。
3. 雇用者、被雇用者の過失でない停電、断水、あるいは天災、火災、危険な疫病、紛争、
国家の管轄機関の要求に基づく稼動場所の移転、経済的な理由など他の客観的な原
因による場合、休業時の賃金は両当事者の合意に基づくが、政府が定める地域の最低
賃金を下回ってはならない。
第 99 条 請負人による給与支払い
1. 請負人または仲介者に依頼する所においては、事業主である雇用者は、この者たちのリ
スト、住所と共に一緒に勤務する被雇用者のリストを入手する必要がある。また、彼らが
賃金の支払いや労働安全・衛生に関する法律を遵守することを保障しなければならない。
2. 請負人または仲介者が被雇用者に対して、無給、不十分な給与の支払い、及びその他
の権利を保証しない場合、事業主である雇用者は、被雇用者に対する賃金の支払や権
利の保証に、責任を負わなければならない。
この場合、事業主である雇用者は、請負人または仲介者に対して賠償を要求し、または
法規に基づいて、国家の管轄機関に争議の解決を要請する権利を有する。
第 100 条 賃金の前払い
1. 被雇用者は、両当事者が合意した条件に基づいて、賃金の前払いを受けることができる。
2. 雇用者は、被雇用者が1週間以上国民の義務を履行するために、一時休業する分の賃
金を、最大 1 カ月分を超えない範囲で前払いし、被雇用者は兵役義務を履行する場合
を除き、前払いを受けた金額を返済しなければならない
第 101 条 賃金の天引き
1. 雇用者は本法第 130 条の規定に基づいて、被雇用者が雇用者の道具・設備を損壊した
ことにより与えた損害を賠償する場合にのみ、賃金の天引きをすることができる。
2. 被雇用者は、自分の賃金が天引きされる理由を知る権利を有する。
3. 毎月の賃金からの天引き額は、被雇用者の毎月の賃金から強制社会保険料・医療保険
料・失業保険料・所得税の納付額を差し引いた金額の 30%を超えてはならない。
第 102 条 補助金・手当・昇級・昇給の制度
補助金・手当・昇級・昇給の制度および被雇用者向けの奨励制度は、労働契約・集団労働
協約、または雇用者の規則の規定において合意されなければならない。
第 103 条 賞与
1. 賞与は、毎年の生産経営結果および被雇用者の業務達成度に基づいて、雇用者が被雇
用者に支給する金額をいう。
2. 賞与規則は、雇用者が事業所の労働組合代表部の意見を参考にして決定し、職場で公
表・公開する。